黙るか黙らせるか ページ49
上に行った三人の内一人は、まだ二階のシャワールームの周辺にいた。
大きな洗濯機の中を見た後は共同トイレの二つしかない扉を一つ一つ慎重に開けている。ご苦労なものだ。僕は背後からそっと忍び寄ると、ギョッとした顔の彼に声をかけた。
「Good evening,Mr. 僕はロビン。言っておくけどシャーロック・ホームズじゃないよ。ここの住人の一人だけど……」
言い終わらない内に彼は、銃口を僕の頭に押し当て、引き金を引きかけた。
だからまあしょうがない。僕はさっと身体を右に流し、すかさず左手でその銃を奪った。彼には何が起きたか分からなかったろうけど、その方がいい。
僕は一階の男にそうしたように彼の首を捻り、もう何処にも歩いて行くことのないようにしてから部屋を後にする。
彼はたいそうな銃を持っていたけど、ここは何も知らないマフィン君やユウミさんも暮らす普通の下宿だ。シャーロックのように所構わず穴を開けるなんていう非常識なマネはしたくない。ナイフも使うつもりはないので置いて行く。
そうして三階に上っていくと、真っ暗な廊下をじりじりと歩く二人がいた。
彼らは二階にいた男のように“扉があれば開けてみる”というような慎重派ではないらしい。あっという間に三号室――マフィン君の部屋の前を通り過ぎ、二号室――シャーロックの部屋の戸口に差し掛かった。が、何ということでしょう!
彼らはそこさえも通り過ぎて、一号室――僕の部屋の扉の前で立ち止まった。鍵穴に針金っぽいものを差し込んでカチャカチャやり始めた。
おいおい、何故僕の部屋だ。
扉には何の防護策も施していなかったから、たちまち開いてしまった。
黙って見ていると、先頭の人間がまず部屋に姿を消した。二番目もそれに続こうとしたが、その前に僕に気付いた。まあその時には真横にいたからね。
「Good evening,Mr. 僕はロビン。ここの部屋の主だけど……」
残念ながらこの男も、僕を喋り始めると同時に黙らせようとして来た。ただ、銃身が長いせいで口が僕の脇腹の向こうにあったから、一階の男のようにナイフを抜いた。それが心臓めがけて突っ込んで来るのを反り返って躱し、左手で叩き落としながら、僕は壁のスイッチを押した。
廊下はパッと明るくなり、目の前の彼が「わっ」と悲鳴を上げた。裸眼の僕さえまぶしさに目を細めたほどなのだから、暗視スコープで明かりを拝むのはかなりキツかっただろう。
11人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
シャーロック(プロフ) - Riruriさん» うわ〜!嬉しいお言葉を本当にありがとうございます!お待ちしておりますのでぜひよろしくお願いします!感謝しております! (11月26日 0時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ネット販売おめでとうございます…!生憎金欠なので、お小遣い入ったら光の速さで購入させていただきます。本当は今すぐにでも欲しいですが……無念。これからもシャーロック様としての活動、カイマナふぁみりー様としての活動共に陰ながら応援しています! (11月24日 16時) (レス) id: fa82e694ee (このIDを非表示/違反報告)
シャーロック(プロフ) - Riruriさん» お返事遅くなってすみません!実は数日前から私が脳梗塞なんじゃないかって家族と大騒ぎしていて、とても余裕がなかったんです(汗)ハロウィン短編を喜んで頂けてとても嬉しいです。敵対関係にないのに互いに踏み切れない二人。歯痒いけれどもそれがいい! (10月15日 22時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - 別世界線の二人も中身はそのままなのに設定が違うだけでここまで関係性も変わっていくのかと驚きましたし、それと同時により二人のことが大好きになりました💞素敵な作品を読ませてくださり本当に有難うございます!!読みにくい長文コメント失礼致しました💦 (10月11日 14時) (レス) id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ハロウィン編、物凄く素敵です…!!新たな設定の二人と知り、どうなるのかとワクワクしながら読み進めていきましたが、そのワクワクを遥かに上回る程の面白さ、“尊さ”でさっきから溜め息が止まりません笑 物語の進め方、まとめ方も凄く美しくてただただ尊敬です…… (10月11日 13時) (レス) @page35 id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:シャーロック | 作者ホームページ:https://kaimanafamily.wixsite.com/welcome-to-sanctuary
作成日時:2022年11月14日 17時