それゆえ穴は ページ39
最初の弾痕壁穴合戦はそれで終わった。あんまり派手に殺り合うと、警察に通報されかねないということも学んだ。
だから一週間くらいは、“何事もなかった”と自分で自分を騙すように過ごしてみた。僕には珍しく、MI6の仕事を早く片付けられないかなって考えてみたりね。
でも騙せなかった。そりゃそうだ。
MI6が僕に言いつけた仕事ときたらかなりいい加減で、腕に牛のタトゥーをしている男たちの写真を数枚わーっと送って来たかと思うと『ロンドンに軍隊上がりの過激派集団が不法に潜伏している。探し出して面倒を起こさぬ内に始末せよ』と厳めしく書いて来た。馬鹿にしてる。
だって、もし彼らが国家を揺らがすような大犯罪を企んでいる集団なら、指令はこんなあいまいなものじゃない。『○時○分に○○街の○○へ行け』となるはずだ。
僕が思うに、彼らの危険度はまだまだ低い。良く見積もってB級、始末命令を出したのは“女王陛下のお膝元でうろうろされるのが気に入らない”とかそういう理由だろう。僕みたいなSS級の諜報員を引っ張り出す意味が何処にあるんだ? そんなに暇そうに見えたか? ふざけんなよ、僕は平穏な日々を謳歌するのに忙しいんだよ!
MI6の件を抜きにしたって、我が壁に穴を開けやがったシャーロックと僕は長年のライバルだっていう問題が横たわる。殺し合いの種なら今までもこれからも、掃いて捨てるほどある。海の砂ほどある。それゆえ穴はそこにある。
何より嫌なのが、シャーロックの部屋の空気がこの穴を通して流れて来るってことだった。僕の本や衣服、それにベッドのマットレスやシーツでさえも、あいつ好みの煙草の匂いが染みついて取れなくなった。
窓が開いていてもシャーロックの匂いは紛れない。これどういう地獄?
暴風で下宿が停電した夜なんか、たまたま廊下で僕の後ろを歩いていたマフィン君が袖を引いて「ホームズさん、電気はいつ復旧するんでしょうね」と言った。心から絶望したよ。危うくマフィン君の首を絞めそうになった。
二週間目、僕はシャーロックに「いい加減穴を塞げ」と談判した。
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シャーロック(プロフ) - Riruriさん» うわ〜!嬉しいお言葉を本当にありがとうございます!お待ちしておりますのでぜひよろしくお願いします!感謝しております! (11月26日 0時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ネット販売おめでとうございます…!生憎金欠なので、お小遣い入ったら光の速さで購入させていただきます。本当は今すぐにでも欲しいですが……無念。これからもシャーロック様としての活動、カイマナふぁみりー様としての活動共に陰ながら応援しています! (11月24日 16時) (レス) id: fa82e694ee (このIDを非表示/違反報告)
シャーロック(プロフ) - Riruriさん» お返事遅くなってすみません!実は数日前から私が脳梗塞なんじゃないかって家族と大騒ぎしていて、とても余裕がなかったんです(汗)ハロウィン短編を喜んで頂けてとても嬉しいです。敵対関係にないのに互いに踏み切れない二人。歯痒いけれどもそれがいい! (10月15日 22時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - 別世界線の二人も中身はそのままなのに設定が違うだけでここまで関係性も変わっていくのかと驚きましたし、それと同時により二人のことが大好きになりました💞素敵な作品を読ませてくださり本当に有難うございます!!読みにくい長文コメント失礼致しました💦 (10月11日 14時) (レス) id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ハロウィン編、物凄く素敵です…!!新たな設定の二人と知り、どうなるのかとワクワクしながら読み進めていきましたが、そのワクワクを遥かに上回る程の面白さ、“尊さ”でさっきから溜め息が止まりません笑 物語の進め方、まとめ方も凄く美しくてただただ尊敬です…… (10月11日 13時) (レス) @page35 id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シャーロック | 作者ホームページ:https://kaimanafamily.wixsite.com/welcome-to-sanctuary
作成日時:2022年11月14日 17時