鉛の弾がこんにちは ページ37
僕の住むベーカー街221Bの下宿「Sanctuary」の一号室の壁には、二号室の住人シャーロックに開けられた穴が幾つもある。まあ穏やかな話じゃない。全部弾痕だし。
ちょうど四ヶ月前――十一月の午後のことだったと覚えている。それもカーペンターズが歌うような憂鬱が上にも憂鬱な雨の月曜日に、『暇な貴方におあつらえ向きの仕事があります』堅物の上司からそんな連絡が来たもんだから、僕は不機嫌MAXで部屋に籠もり悶々と地獄絵図を描いていた。
そしたら突然雷が落ちるような音が続けざまに響いて、滑らかな壁から「こんにちは」「こんにちは」――そういう具合で鉛の弾が飛び出して来た。
すぐに腹ばいになって安全確保、ついでに
ただのひ弱な医者志望のマフィン君はまだ若いのに可哀想だけど、そこに引っ越したが運の尽き、という訳だ。コンマ一秒で蜂の巣になっていたはず。ただのひ弱な浪人中の医者志望だし。
シャーロックは何故そんな危険なことをしたのかって? 知らない。
弾痕は手当たり次第の水玉模様って訳じゃなく、こちらから見ると鏡文字の「Y・V」になるよう丁寧に形作られているから、僕が以前から心を寄せているこの下宿の大家さん――天使のように優しく美しいユウミ・ベランジェールさんに関係があるんじゃないかって思うけど、彼女の頭文字を壁に刻みたくなるほどの心境って何だろうね。知りたくもない。
当然僕は斧で扉を叩き割って二号室に殴り込んだ。
「やあ、お邪魔するよ。シャーロック」
「ああ、歓迎しよう。ロビン」
もうもうと立ち籠める、この街名物の霧より深い煙草の煙。その生みの親であるシャーロックは、肘掛け椅子にゆったり腰掛け、サイレンサー付きのデザートイーグルを弄び、完成したばかりの作品「Y・V」に見惚れていた。
さすがギャングの用心棒。真っ黒髪がボサボサでも身なりがだらしなくても、煙草を吹かしているだけで妙にサマになった。太々しいというか何というか。
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シャーロック(プロフ) - Riruriさん» うわ〜!嬉しいお言葉を本当にありがとうございます!お待ちしておりますのでぜひよろしくお願いします!感謝しております! (11月26日 0時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ネット販売おめでとうございます…!生憎金欠なので、お小遣い入ったら光の速さで購入させていただきます。本当は今すぐにでも欲しいですが……無念。これからもシャーロック様としての活動、カイマナふぁみりー様としての活動共に陰ながら応援しています! (11月24日 16時) (レス) id: fa82e694ee (このIDを非表示/違反報告)
シャーロック(プロフ) - Riruriさん» お返事遅くなってすみません!実は数日前から私が脳梗塞なんじゃないかって家族と大騒ぎしていて、とても余裕がなかったんです(汗)ハロウィン短編を喜んで頂けてとても嬉しいです。敵対関係にないのに互いに踏み切れない二人。歯痒いけれどもそれがいい! (10月15日 22時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - 別世界線の二人も中身はそのままなのに設定が違うだけでここまで関係性も変わっていくのかと驚きましたし、それと同時により二人のことが大好きになりました💞素敵な作品を読ませてくださり本当に有難うございます!!読みにくい長文コメント失礼致しました💦 (10月11日 14時) (レス) id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ハロウィン編、物凄く素敵です…!!新たな設定の二人と知り、どうなるのかとワクワクしながら読み進めていきましたが、そのワクワクを遥かに上回る程の面白さ、“尊さ”でさっきから溜め息が止まりません笑 物語の進め方、まとめ方も凄く美しくてただただ尊敬です…… (10月11日 13時) (レス) @page35 id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シャーロック | 作者ホームページ:https://kaimanafamily.wixsite.com/welcome-to-sanctuary
作成日時:2022年11月14日 17時