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投げ込まれた火炎瓶 ページ28

「気にするなって言っているだろう。連中は本当に何も分かっていないんだ。この件で君がどんなに苦労しているかなんて」
「だがお前はさっき、見た目が全てだと言っただろう。その通り、世間から見れば俺はただの能なしだ。落ちぶれた頼りのない奴だ。しかしニュー・ジャックには庶民を善行へ導く力がある」
「まあ神だって祀り上げてる連中もいるね」
「そうだ。その神を逮捕しかねない――いや例え自首しようと証拠がないんじゃ無理だが――警察や探偵には消えて欲しいと思うのが自然だろう」
「そうかも知れないけど、ニュー・ジャックがいるからって悩み事が全部消えるわけじゃないんだから、客足はその内戻るさ。そこまで気落ちする必要あるのかい? 別に痛くも痒くもないじゃないか」
「まあな。先週は火炎瓶を投げ込まれたが別に痛くも痒くもなかった」

 言いながらシャーロックは窓の下の黒ずんだ床を見る。まだ日が浅く、修理の手も間に合わないので現場は意図せず保存されていた。
 投げ込まれた火炎瓶は三、四本。思いのほか激しく燃えたのでフローリング材の一部が焼失し、床下のコンクリートが顔を出すありさまだった。しかし、焦って瓶を取り除こうとしたために両手に負った火傷の方は、もう痛みも感じないまでに回復している。

「うわ、前言撤回するね。やった奴らの名はリストアップしたかい」
「いや。大した被害はなかったからいい」
「そうかね、僕だったら絶対に思い知らせてやるんだけど」

 ロビンは少しの間、シャーロックには分からない古い言葉で悪態をついた。

「でも此処に住んでいる以上、君は家賃を払わなきゃいけないんだぜ。仕事がなくて大丈夫なのかい? いつもの警部に他の事件を回してもらったら? そいつで名誉挽回しよう」
「俺のせいで減給になったレストレードにか? 無理だ。あいつには家庭がある。上手くは行っていないようだが」
「でも、もうどれくらい大家さんに待ってもらってるんだっけ?」
「三ヶ月だ」
「……よく追い出されずに済んでるね」
「そりゃ、」

 シャーロックは一瞬言葉を詰まらせて、水滴滲む窓の外を凝視した。

「俺の()助手と一緒にスイスへ旅行中だからな」
「何だって?」

 驚きに目を見開くロビンを見て、シャーロックは自嘲気味に笑う。笑い過ぎて咳き込む程に。

二人で駆け落ちを→←探偵はもう要らない



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設定タグ:シャーロック , オリジナルBL , 腐女子   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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シャーロック(プロフ) - Riruriさん» うわ〜!嬉しいお言葉を本当にありがとうございます!お待ちしておりますのでぜひよろしくお願いします!感謝しております! (11月26日 0時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ネット販売おめでとうございます…!生憎金欠なので、お小遣い入ったら光の速さで購入させていただきます。本当は今すぐにでも欲しいですが……無念。これからもシャーロック様としての活動、カイマナふぁみりー様としての活動共に陰ながら応援しています! (11月24日 16時) (レス) id: fa82e694ee (このIDを非表示/違反報告)
シャーロック(プロフ) - Riruriさん» お返事遅くなってすみません!実は数日前から私が脳梗塞なんじゃないかって家族と大騒ぎしていて、とても余裕がなかったんです(汗)ハロウィン短編を喜んで頂けてとても嬉しいです。敵対関係にないのに互いに踏み切れない二人。歯痒いけれどもそれがいい! (10月15日 22時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - 別世界線の二人も中身はそのままなのに設定が違うだけでここまで関係性も変わっていくのかと驚きましたし、それと同時により二人のことが大好きになりました💞素敵な作品を読ませてくださり本当に有難うございます!!読みにくい長文コメント失礼致しました💦 (10月11日 14時) (レス) id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ハロウィン編、物凄く素敵です…!!新たな設定の二人と知り、どうなるのかとワクワクしながら読み進めていきましたが、そのワクワクを遥かに上回る程の面白さ、“尊さ”でさっきから溜め息が止まりません笑 物語の進め方、まとめ方も凄く美しくてただただ尊敬です…… (10月11日 13時) (レス) @page35 id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シャーロック | 作者ホームページ:https://kaimanafamily.wixsite.com/welcome-to-sanctuary  
作成日時:2022年11月14日 17時

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