歪んだ愛 ページ14
ああ、最高に気分が悪い。酷い頭痛に襲われて、僕は椅子に寄りかかった。
部屋に充満した煙草の煙は、窓が開いているのに出て行こうとしない。いや、出て行けないのかも知れない。この男の許可なくしては。畜生……僕は爪が食い込んで血が滲むほどに拳を握りしめた。
騙されたとは言え、僕は約束を反故にするつもりはない。そんな二流三流の男じゃない——けれど、これはあまりにも癪に触る。
「死んだ魚の目をして生きてやろうか」せめて心まではこの男のものになるまい。
「ああ、せいぜい
「確かに俺たちには、互いに過去の問題がある。本気で殺し合いもしたからな。だがそれを差し引いても、俺は生涯を共にするならお前しかいないと思った。何故か? お前は俺を前にして、一歩も引かなかった。勝負はいつも互角だった。お前は俺の見る世界を見ることが出来る唯一の人間だ。この下宿での再会も運命のようなものだろう。MI6の仕事は続けても良いが、もう離れることは許さない。俺はお前の行くところは何処へでもついて行く。その逆もまた然り」
「なるほど、君は自分の楽しみのために僕を嵌めたのか。歪な愛だね」
この色狂いの死神が。
「だが、そう悪い話ではないはずだ」
シャーロックは勝ち誇ったような余裕の笑みで煙を吐いた。
「お前は孤独な悪魔だ。ごく普通の女との暮らし? それで狂気が満たされるか? 世間一般の幸福はお前を消耗させるだけだ」
「うるさい、決めつけるな」
「いや、あえて言う。お前は俺と共に生きる方がずっと良い——幸い、過去を塗り替える時間も策もたっぷりあるしな」
睨むだけで人を殺せるのなら、僕はもうとっくにこの男を殺している。近付く者全てを石に変えた海の怪女メドゥサのように。
けれどシャーロックはたじろぎもせず、僕の視線を真正面から受け止めた。彼は短くなった煙草を窓の外に投げ捨てると、いつの間にやら同じリングを嵌めたその指で、僕の頬を撫でながら淫靡に笑った。
「骨の髄まで嵌めてやるから覚悟しろ」
【完】
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シャーロック(プロフ) - Riruriさん» うわ〜!嬉しいお言葉を本当にありがとうございます!お待ちしておりますのでぜひよろしくお願いします!感謝しております! (11月26日 0時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ネット販売おめでとうございます…!生憎金欠なので、お小遣い入ったら光の速さで購入させていただきます。本当は今すぐにでも欲しいですが……無念。これからもシャーロック様としての活動、カイマナふぁみりー様としての活動共に陰ながら応援しています! (11月24日 16時) (レス) id: fa82e694ee (このIDを非表示/違反報告)
シャーロック(プロフ) - Riruriさん» お返事遅くなってすみません!実は数日前から私が脳梗塞なんじゃないかって家族と大騒ぎしていて、とても余裕がなかったんです(汗)ハロウィン短編を喜んで頂けてとても嬉しいです。敵対関係にないのに互いに踏み切れない二人。歯痒いけれどもそれがいい! (10月15日 22時) (レス) id: 37fed7f1d4 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - 別世界線の二人も中身はそのままなのに設定が違うだけでここまで関係性も変わっていくのかと驚きましたし、それと同時により二人のことが大好きになりました💞素敵な作品を読ませてくださり本当に有難うございます!!読みにくい長文コメント失礼致しました💦 (10月11日 14時) (レス) id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
Riruri - ハロウィン編、物凄く素敵です…!!新たな設定の二人と知り、どうなるのかとワクワクしながら読み進めていきましたが、そのワクワクを遥かに上回る程の面白さ、“尊さ”でさっきから溜め息が止まりません笑 物語の進め方、まとめ方も凄く美しくてただただ尊敬です…… (10月11日 13時) (レス) @page35 id: 7e45e119a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:シャーロック | 作者ホームページ:https://kaimanafamily.wixsite.com/welcome-to-sanctuary
作成日時:2022年11月14日 17時