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その夜、少し不貞腐れていた私にジョンハンさんは独り言のように話し始めた。
ベッドの中で、私を抱きしめながら。
私のことを、好きになったきっかけを。
6年前の初めて会ったあの日から、頭の片隅にはずっと私の姿を映していたという。
毎日、少しずつ、雫のように落ちる彼の気持ちが溢れたのは、2年前のある春の日。
今が朝か、昼か、夜かもわからない。何月何日で、何曜日かもわからない。
人生で一番忙しかった頃。
とある人間に私たちの仕事を馬鹿にされたときがあった。
JH「あの人、結構偉い人だったじゃん?この業界で有名だし」
「そうですね、今冷静になって考えたら私相当やらかしてますね。笑」
JH「でもあの瞬間、あの場にいた全員がAの味方だったよ?」
「それがなによりの救いでしたよ」
私だけが馬鹿にされるなら黙ってられるけど、13人やスタッフや作品までもに口を出されるのは許せなかった。
指を咥えて、黙って見てろなんて。
それが大人のルールなら、社会のルールなら、この業界のルールなら、そんなものは消してしまいたかった。
JH「.........あのときのAは、すっごいかっこよくて綺麗で、でもなんか」
「なんか?」
JH「消えてしまいそうなくらい、強くて弱かったんだよね」
「.........」
彼らのためなら、私は弱くても強くなれたあの瞬間。
そんな瞬間に、好きになってくれたんですね。
JH「あれが、Aを好きって気持ちを理性じゃ抑えきれなくなった瞬間だったかな。この子を守りたい大切にしたいなーって思った日」
「そんな前から、好きでいてくれたんですね」
JH「一途でしょ?」
「.........でもジョンハンさんその間に」
JH「あー、余計なこと気づいたからこの話は終了」
「ちょ、!それはなしでしょー!」
おやすみ〜とキスを落として強制終了したジョンハンさん。
本当にそれはなしでしょ。さっきまでの空気返して?え?
「えー、本当に寝るの?」
JH「.........寝るよ」
「.........」
JH「A、」
「はい」
JH「俺のわがままだけど、初めてはAの全部を覚えてたいの。朝起きて、俺の中でAの記憶が少しでも曖昧だと嫌だから」
_______________だから、今日はこのままで。
世界で一番くすぐったいわがままに、私は目を瞑った。
おやすみなさい、ジョンハンさん。
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作者名:だみ | 作成日時:2024年3月27日 23時