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「お疲れ、蓮」
俺に抱きついてくる。
いつものことだけれど、いつもとは様子が違った。
目「A?なにかあった?」
「…うん」
やっぱり。
俺と目を合わさないのは、なにかあったんだってわかりやすかった。
「仕事で。自分が嫌いだなって思った」
目「失敗しちゃったの?」
「失敗、なんだろうな。どうしてうまくできなかったんだろうって、後悔してる」
Aが病みやすいことは、10年以上一緒にいてわかってた。
ときどきこうして、元気をなくして、1人で抱え込んで。
「もうやだ。嫌い」
目「俺はAが好きだよ」
「わたしは嫌い」
ちょっとしたことでも重く受け止めてしまうA。
俺はそんなAを、慰めて励ますことしかできない。
Aが抱えてるモヤモヤを、全部退治してしまえたらいいのに。
「だいっきらい」
感情が爆発して、泣き出してしまう。
俺は膝を折って、Aの顔を覗き込みながら涙を拭った。
ようやくAの目が俺を見た。
「蓮もきっと、わたしといること後悔するよ」
Aのその言葉に、さすがの俺も黙っていられなかった。
目「そんなことは一生ない」
Aを抱え上げて寝室に運ぶ。
ベッドに降ろして、俺もその上にかぶさった。
「蓮疲れてるんだからシャワー浴びて寝ようよ」
目「こんな状態のA放っておけないでしょ」
Aがどんなにふてくされても、受け止めるよ。
俺がAに構いたい。
目「Aは自己否定感が強すぎるんだ。俺はAがダメなんて思ったことはない」
Aはスンッと鼻をすすって、唇を突き出しながら俺を見る。
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作者名:わたあめなのは | 作成日時:2024年3月28日 15時